リチウム電池について考える前に、まずは電池の仕組みから見ていきましょう。
世の中にある物質は、全て原子という単位から作られています。原子にはプラスの電極を持つ原子核(陽子)と、その周りを周っている電子から作られます。原子核はくっつき合っていて一塊になっていますが、その周りの電子は自由に飛び周っています。この電子が、何かの弾みで増えたり減ったりすることがあります。電子が減ったときの原子を陽イオン、増えたときの原子を陰イオンと呼びますが、元々原子は原子核と電子のバランスが取れている状態が一番安定しており、原子はこのバランスの取れた形になろうとします。
ここでもし、片方の物質が陽イオンで、もう片方が陰イオンだったらどうなるでしょうか。陰イオンには余計な電子が飛び回っており、陽イオンはその電子をもらって安定しようとします。すると、陰イオンから陽イオンへ、余っている電子が飛び移っていきますね。この電子の流れが一般的に言う電流です。そして、このような陰イオンから陽イオンへ電子が流れる仕組みを利用しているのが電池です。
上で見たように、電池を作るためには、普通の物質原子から強制的に陽イオンを作り出し、電子を発生させてやる必要があります。陽イオンを作るというのは、平たく言えば、水溶液に溶かしてやるということです。そこで、金属を酸性の液体につけて溶かすことによってイオン化してあげます。この液のことを電解液と言います。
そして、使いたいところに電子を流してやらないと意味がありませんから、電子の流れを作ってやるために、溶ける金属と電解液に解けない金属とを電子を通す物質(銅線など)でつなげます。こうすると、溶けた金属から出た電子が銅線を通って溶けない金属のほうに流れていきます。酸性の液体の中には水素イオンが含まれていますから、もう一方の金属に流れた電子は電解液の中にある水素イオンと結合して安定します。つまり、電池は
- 電解液
- 電解液につけて陽イオンになる金属
- 電子の受け皿となる電解液に溶けない金属
の3つから作られているのです。
電池は今まで見てきたように、電解液に溶ける金属と、酸性の電解液が必要です。このうちどちらか一方がなくなってしまうと、電子が発生しなくなり、流れなくなります。これが一般的に言う電池切れです。電池の容量を増やすためには、溶かす金属と電解液の量を増やすしかありませんが、それはそのまま電池の巨大化につながります。よって、小さくて強力な電池を作るには、発生電子量に対して、体積が小さいものがより適しています。
前置きが終わったところで、いよいよリチウム電池について見ていきましょう。リチウム電池とは、電解液に溶ける金属としてリチウムを使用した電池のことです。リチウム電池は、1960年頃からアメリカで使われ始め、日本では1976年から商品化され、使われるようになりました。リチウム電池は他のマンガン電池やアルカリ電池と比べて、メリットがいくつもあります。
電圧が高い
リチウム電池は、他の電池と違って電圧が高く取れます。これは、リチウムがイオンになったときの電位が低い(約-3ボルト)からです。他の電池が1.5ボルトなのに対し、リチウム電池は公称3.0ボルトです。従って、普通の乾電池2個並べるのと同じだけの電圧がリチウム電池1個で出せることになります。
安定している
電池を豆電球につなげているとわかる現象ですが、普通の電池は電池切れ近くになると、少しずつ暗くなっていきます。これは、ある一定のところまで電池を使ったら、少しずつ電気が減っていくことを意味しています。ところが、リチウム電池の場合は、電池切れになる直前まで、通常時と変わらない電力を供給してくれます。例えて言うならば、時計に普通の電池を入れておくと、徐々に時計が遅れだすのに対し、リチウム電池の場合は、気がついたら時計が止まっているという感じでしょうか。
自己放電が少ない
電池は、使っていなくても、徐々に電子を放出しています。これを自己放電といいますが、リチウム電池は、使用していないときには、ほとんど自己放電しません。単純に、耐用年数が高いということが言えます。
温度差に強い
普通の電池は、低温になると電解液の部分が固まってしまうため、一定以下の気温では使用困難ですが、リチウム電池の場合は水分のない電解液を使用しているので、低温でも問題なく使用できます。
容量が大きい
リチウムは原子番号でいうと3番目の原子です。原子レベルで言えば、水素、ヘリウムに次ぐ軽さです。従って、圧縮すると、原子量としてはもの凄い量になります。つまり、同じ体積でも、発生する電子の量が多いということになります。実際、リチウム電池は、普通のマンガン電池と比べて、約10倍もの電子を発生させることができます。
このように、高性能で、大容量で、長持ちし、どのような環境下でも安定して使えるといいことだらけに見えるリチウム電池ですが、もちろんデメリットもないわけではありません。リチウム電池は、乾電池型で値段がアルカリ電池の約3〜4倍と、結構高価です。
さらに問題なのは、乾電池としてのリチウム電池は、世界を見渡してもほとんど製造されておらず、入手が困難なことです。乾電池においては、わざわざリチウム電池にする必要性をほとんど感じていないのでしょう。アルカリ電池で十分だということですね。
以上の理由により、リチウム電池は高性能ではありますが、乾電池としてはほとんど使われていません。リチウム電池は、それよりも、ボタン電池としての活用がされています。値段は若干高めですが、小型化も容易で、高電力が発生し、安定電力が長期間供給できることから、ボタン型のリチウム電池は、各種の電子機器やリモコン、カメラなどに広く使われています。
コンピューターのメモリーバックアップ用にも、LR44やCR2032のようなボタン電池が使われています。また、二次電池としてではありますが、リチウムイオン電池や、リチウムポリマー電池などにも応用されています。何と言っても高性能ですし、今後、ますますリチウム電池の用途は広がっていくことでしょう。